茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
「いいからさっさと消してよ! 先輩は本当に余計なことをしてくれて……! あの場に先輩さえいなければうまく行ったのに! 東雲さんを使って責めるなんて……! 先輩の卑怯者!」
陽翔はまるで靴に入り込んだ小石を見るように彼女を見下ろし、上からも下から耳障りな声に眉を顰め、音量を下げてからスマホをトレンチコートの袖に潜り込ませる。継続して忌まわしいあの音声と、目の前の騒音めいた百子への暴言を浴びるのは頭痛を誘発する物以外の何物でもない。実際にこめかみが心拍と同じリズムでどくどくと鈍い痛みを発していた。
「百子が卑怯者……? 貴女という人は何とも面白いことを言いますね。百子は自分の家に帰ってきて、証拠を押さえただけなのに……ああ、証拠を持ってる俺も貴女の中では卑怯者でしたっけ? 確かに俺は百子から映像を送ってもらいましたが、それは俺から言い出したことですし、百子は貴女に俺が映像を見せていることなんて知りませんよ? むしろ俺が貴女に証拠を見せるなんて知ったら、優しい百子はそんなことしなくてもいいって全力で止めにかかりそうですし」
百子のことを頭に浮かべているため、陽翔は心の底からの笑顔を浮かべ、木嶋相手に盛大に惚気て、腕を下ろしてポケットに手を突っ込む。真っ赤になっていた彼女は、打って変わって青い顔をしており、彼のトレンチコートから手を離す。薄ら寒い物を感じ取った彼女は、二、三歩後ずさって震える声で問うた。
「なんで……! なんでこんなことを! そんな証拠をずっと持ち歩いて……!」
「いずれ会う貴女に、百子に近づくな、関わるなと警告したかっただけですよ。貴女の一連の行動を見ていると、百子に対しての行いに、絶対に反省していないと確信していたので。謝罪もなく、データを消せと言うくらいですもんね?」
彼女はようやく、自分がとんでもない相手を敵に回したことが飲み込めたようで、頭を下げ、蚊の鳴くような声を出した。
「ご、ごめんなさい……反省しますから……どうか、その映像だけは……!」
しかし陽翔の液体窒素のように冷ややかな瞳は全くゆるがず、それどころか先ほどよりも冷たさを増していた。
「別に俺は映像をばら撒くなんて一言も言ってないんですけどね……もしやばら撒いて欲しいんですか? 貴女こそ悪趣味ですね」
青い顔のまま、木嶋はふるふると首を横に振り、上辺だけの謝罪を繰り返す。いい加減聞き飽きた陽翔は、ゆっくりと彼女に近づき、文字通り彼女の目の前に証拠映像をちらつかせる。
「警告します。百子にこれ以上関わらないで下さい。今後彼女を傷つけることがあれば……分かりますよね?」
陽翔はまるで靴に入り込んだ小石を見るように彼女を見下ろし、上からも下から耳障りな声に眉を顰め、音量を下げてからスマホをトレンチコートの袖に潜り込ませる。継続して忌まわしいあの音声と、目の前の騒音めいた百子への暴言を浴びるのは頭痛を誘発する物以外の何物でもない。実際にこめかみが心拍と同じリズムでどくどくと鈍い痛みを発していた。
「百子が卑怯者……? 貴女という人は何とも面白いことを言いますね。百子は自分の家に帰ってきて、証拠を押さえただけなのに……ああ、証拠を持ってる俺も貴女の中では卑怯者でしたっけ? 確かに俺は百子から映像を送ってもらいましたが、それは俺から言い出したことですし、百子は貴女に俺が映像を見せていることなんて知りませんよ? むしろ俺が貴女に証拠を見せるなんて知ったら、優しい百子はそんなことしなくてもいいって全力で止めにかかりそうですし」
百子のことを頭に浮かべているため、陽翔は心の底からの笑顔を浮かべ、木嶋相手に盛大に惚気て、腕を下ろしてポケットに手を突っ込む。真っ赤になっていた彼女は、打って変わって青い顔をしており、彼のトレンチコートから手を離す。薄ら寒い物を感じ取った彼女は、二、三歩後ずさって震える声で問うた。
「なんで……! なんでこんなことを! そんな証拠をずっと持ち歩いて……!」
「いずれ会う貴女に、百子に近づくな、関わるなと警告したかっただけですよ。貴女の一連の行動を見ていると、百子に対しての行いに、絶対に反省していないと確信していたので。謝罪もなく、データを消せと言うくらいですもんね?」
彼女はようやく、自分がとんでもない相手を敵に回したことが飲み込めたようで、頭を下げ、蚊の鳴くような声を出した。
「ご、ごめんなさい……反省しますから……どうか、その映像だけは……!」
しかし陽翔の液体窒素のように冷ややかな瞳は全くゆるがず、それどころか先ほどよりも冷たさを増していた。
「別に俺は映像をばら撒くなんて一言も言ってないんですけどね……もしやばら撒いて欲しいんですか? 貴女こそ悪趣味ですね」
青い顔のまま、木嶋はふるふると首を横に振り、上辺だけの謝罪を繰り返す。いい加減聞き飽きた陽翔は、ゆっくりと彼女に近づき、文字通り彼女の目の前に証拠映像をちらつかせる。
「警告します。百子にこれ以上関わらないで下さい。今後彼女を傷つけることがあれば……分かりますよね?」