茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
百子は頷いて、秋に咲く花の名前を候補に上げる。陽翔と話し合った結果、竜胆にちなんでリンちゃんと呼ぶことに決めた。
それからは来る日も来る日も、二人は代わる代わるリンに話し掛け、お腹を撫で、まだ見ぬリンの誕生をわくわくしながら待つことになる。相も変わらず、お腹の張りやつわり、そして不安定な精神の起伏に苦しめられていた百子だったが、さらに1ヶ月経過すると、それらも徐々に落ち着いてくるようになる。それに伴い、お腹が少しずつ大きくなっていくのを、百子は感じ取れるようになり、体内から僅かな振動を捉え、ベッドに腰掛けていた百子は、あっと叫ぶ。
「あ、陽翔! 今リンちゃんが動いた!」
「本当か?!」
陽翔は彼女の、膨らみが目立ってきた下腹部に手を当てるが、特に動きは見られない。陽翔は口元に淋しげな笑みを浮かべていたが、リンに呼び掛けると、まるで返事をするかのように、陽翔の手のひらに、ピクピクと振動を寄越した。
「リンちゃん、返事してくれたんだな。ありがとう……お父さん、それだけで頑張れそうだ」
感極まって涙ぐむ陽翔の頭を、百子はくすくすと笑いながら撫でる。もう片方の手は、お腹の上にある彼の手の上に置いた。
「大げさね。でも……お母さんも、リンちゃんもどんどん大きくなってて嬉しい。早く顔が見たいな」
胎動は週を追うごとに増えていき、二人がリンに話しかけてお腹を撫でている時や、百子がお風呂に浸かっている時、美味しいご飯を食べ終えた時に、盛んに発生していた。何故か寝る前にも、リンがご機嫌にニョロニョロと動くため、百子は寝られずに悶々とする羽目になっていたが、陽翔がお腹を撫でると、徐々にそれも落ち着くようになる。
とはいえ、さらに2ヶ月経過すると、お腹が波打ったり、皮膚越しにリンの体の一部が浮き出るようになる。時折痛むが、リンの成長した証でもあり、嬉しい悲鳴を百子は噛み締めていた。
「うっ……」
既に産休を取っている百子は、ある日買い物から帰る途中に、唐突に強いお腹の張りを感じ取る。家まであと数十メートルではあるが、お米5キロを持ち続けたのが祟ったらしい。
「リンちゃん、ごめん。あと少しだから……ちょっとだけ我慢してね……」
そう声を掛けながら、文字通り重い足を引きずり、何とか家まで辿り着くと、百子はお米を玄関に置いて、のろのろとリビングのソファーに座る。人間二人分の重力から開放された足が鈍い痛みを訴えるよりも、遥かにお腹の痛みが酷い。胎動が無いのに、お腹が急に痛くなる時は、基本的に百子が無理をしている時なのだ。
「リンちゃん……ありがとう。お母さんが無理してるの、分かってたのね……もう無理しないから、大丈夫よ……」
百子は荒い息をつきながら、お腹を撫でて横になる。最近は15分程度歩いただけでもお腹が張るようになってしまい、買い物もろくに行けなくなっていた。しかし、お米の在庫が無いことに気づいた百子は、今日は大丈夫だと言い聞かせて強行し、その結果がこれである。小さな足の形にお腹が変形してしまい、百子はしょんぼりして謝罪した。
「そうね……お父さんに頼むべきだった。一人でやらなくても、お父さんがいるもんね。ごめん、リンちゃん。もうしないから……」
ソファーでうとうとしていた百子は、玄関に置かれた米を目撃した陽翔に、懇懇と説教をされてしまう。いつもは過保護だと告げる百子だったが、今日のお腹の痛みは過去最高であったため、自分とリンのために、買い物も陽翔に任せることにしたのだった。
それからは来る日も来る日も、二人は代わる代わるリンに話し掛け、お腹を撫で、まだ見ぬリンの誕生をわくわくしながら待つことになる。相も変わらず、お腹の張りやつわり、そして不安定な精神の起伏に苦しめられていた百子だったが、さらに1ヶ月経過すると、それらも徐々に落ち着いてくるようになる。それに伴い、お腹が少しずつ大きくなっていくのを、百子は感じ取れるようになり、体内から僅かな振動を捉え、ベッドに腰掛けていた百子は、あっと叫ぶ。
「あ、陽翔! 今リンちゃんが動いた!」
「本当か?!」
陽翔は彼女の、膨らみが目立ってきた下腹部に手を当てるが、特に動きは見られない。陽翔は口元に淋しげな笑みを浮かべていたが、リンに呼び掛けると、まるで返事をするかのように、陽翔の手のひらに、ピクピクと振動を寄越した。
「リンちゃん、返事してくれたんだな。ありがとう……お父さん、それだけで頑張れそうだ」
感極まって涙ぐむ陽翔の頭を、百子はくすくすと笑いながら撫でる。もう片方の手は、お腹の上にある彼の手の上に置いた。
「大げさね。でも……お母さんも、リンちゃんもどんどん大きくなってて嬉しい。早く顔が見たいな」
胎動は週を追うごとに増えていき、二人がリンに話しかけてお腹を撫でている時や、百子がお風呂に浸かっている時、美味しいご飯を食べ終えた時に、盛んに発生していた。何故か寝る前にも、リンがご機嫌にニョロニョロと動くため、百子は寝られずに悶々とする羽目になっていたが、陽翔がお腹を撫でると、徐々にそれも落ち着くようになる。
とはいえ、さらに2ヶ月経過すると、お腹が波打ったり、皮膚越しにリンの体の一部が浮き出るようになる。時折痛むが、リンの成長した証でもあり、嬉しい悲鳴を百子は噛み締めていた。
「うっ……」
既に産休を取っている百子は、ある日買い物から帰る途中に、唐突に強いお腹の張りを感じ取る。家まであと数十メートルではあるが、お米5キロを持ち続けたのが祟ったらしい。
「リンちゃん、ごめん。あと少しだから……ちょっとだけ我慢してね……」
そう声を掛けながら、文字通り重い足を引きずり、何とか家まで辿り着くと、百子はお米を玄関に置いて、のろのろとリビングのソファーに座る。人間二人分の重力から開放された足が鈍い痛みを訴えるよりも、遥かにお腹の痛みが酷い。胎動が無いのに、お腹が急に痛くなる時は、基本的に百子が無理をしている時なのだ。
「リンちゃん……ありがとう。お母さんが無理してるの、分かってたのね……もう無理しないから、大丈夫よ……」
百子は荒い息をつきながら、お腹を撫でて横になる。最近は15分程度歩いただけでもお腹が張るようになってしまい、買い物もろくに行けなくなっていた。しかし、お米の在庫が無いことに気づいた百子は、今日は大丈夫だと言い聞かせて強行し、その結果がこれである。小さな足の形にお腹が変形してしまい、百子はしょんぼりして謝罪した。
「そうね……お父さんに頼むべきだった。一人でやらなくても、お父さんがいるもんね。ごめん、リンちゃん。もうしないから……」
ソファーでうとうとしていた百子は、玄関に置かれた米を目撃した陽翔に、懇懇と説教をされてしまう。いつもは過保護だと告げる百子だったが、今日のお腹の痛みは過去最高であったため、自分とリンのために、買い物も陽翔に任せることにしたのだった。