茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
どうやら元彼の家に浮気相手が住み着いているという、陽翔の予想は当たってたらしい。しかも百子に話を聞いてみれば、百子のランジェリーは今の所見つかってないという。
「……きっと捨てられたわね。弘樹の相手に」
百子はランジェリーの入っている引き出しを開ける前から嫌な予感はしていたものの、まさかそれらが総入れ替えされていたとは思わなかった。十中八九弘樹の浮気相手の仕業だろう。弘樹が腹いせに捨てた可能性も無くはないが、他の物は置いておいてるのにランジェリーだけ捨てる理由が浮かばない以上、彼の仕業とは考えにくい。
「……何て奴だ! そうか、百子が一度荷物を取りに帰ると踏んでの嫌がらせか……! 趣味が悪くて吐き気がする!」
どうやら浮気相手は自己顕示欲の塊なのかもしれない。ひょっとしたら元彼が百子の持ち物を捨てるのに渋り、それに対して怒って百子のランジェリーを捨てた可能性もあるが、いずれにしても物を無断で捨てるような人間とは関わらない方が賢明だと陽翔は思う。彼はショックで硬直してる百子をそっと抱き締め、僅かに震える彼女の背中をゆるゆると撫でた。
「ありがとう……もうここに未練なんて無いわ。ここはもう他人の家だし、私には帰る家があるもん。物を無断で捨てるような人がいる家なんていらない……」
百子はまだ動きたくなかったが、いつまでも他人の家にいるわけにもいかない。百子は陽翔の頬に軽くキスを落とし、怠ける体を叱咤して立ち上がり、寝室や洗面所や台所にある自分の物をせっせと運び出して陽翔と一緒に詰めていく。家に台車があったので、ガムテープで封をしたダンボールを一気に運び、車から新しいダンボールを出して、そこにまた物を詰めるのを繰り返すと2時間程度で作業が完了した。
「陽翔、手伝ってくれてありがとう。こんなに早く終わるなんて思わなかったわ」
リビングのテーブルで紙にペンを走らせ、二枚あるうちの一枚を封筒に入れて百子は陽翔に微笑みかけたので、陽翔も釣られて笑顔で答える。
「このくらいお安い御用だ。忘れ物がないならそれ書いたら出るぞ」
百子は頷いて紙に視線を戻したが、彼女の目は笑っていない。陽翔はそんな百子を目撃したのは初めてで、背筋にそろそろと冷たい物が這っているような感覚を覚える。
「百子、何を書いたんだよ」
百子は逡巡していたが、封筒と紙を陽翔にすっと差し出す。落ち着きのない彼女を見て怪訝に思ったが、紙に書かれた内容を読んで思わず目を見開いた。
「……きっと捨てられたわね。弘樹の相手に」
百子はランジェリーの入っている引き出しを開ける前から嫌な予感はしていたものの、まさかそれらが総入れ替えされていたとは思わなかった。十中八九弘樹の浮気相手の仕業だろう。弘樹が腹いせに捨てた可能性も無くはないが、他の物は置いておいてるのにランジェリーだけ捨てる理由が浮かばない以上、彼の仕業とは考えにくい。
「……何て奴だ! そうか、百子が一度荷物を取りに帰ると踏んでの嫌がらせか……! 趣味が悪くて吐き気がする!」
どうやら浮気相手は自己顕示欲の塊なのかもしれない。ひょっとしたら元彼が百子の持ち物を捨てるのに渋り、それに対して怒って百子のランジェリーを捨てた可能性もあるが、いずれにしても物を無断で捨てるような人間とは関わらない方が賢明だと陽翔は思う。彼はショックで硬直してる百子をそっと抱き締め、僅かに震える彼女の背中をゆるゆると撫でた。
「ありがとう……もうここに未練なんて無いわ。ここはもう他人の家だし、私には帰る家があるもん。物を無断で捨てるような人がいる家なんていらない……」
百子はまだ動きたくなかったが、いつまでも他人の家にいるわけにもいかない。百子は陽翔の頬に軽くキスを落とし、怠ける体を叱咤して立ち上がり、寝室や洗面所や台所にある自分の物をせっせと運び出して陽翔と一緒に詰めていく。家に台車があったので、ガムテープで封をしたダンボールを一気に運び、車から新しいダンボールを出して、そこにまた物を詰めるのを繰り返すと2時間程度で作業が完了した。
「陽翔、手伝ってくれてありがとう。こんなに早く終わるなんて思わなかったわ」
リビングのテーブルで紙にペンを走らせ、二枚あるうちの一枚を封筒に入れて百子は陽翔に微笑みかけたので、陽翔も釣られて笑顔で答える。
「このくらいお安い御用だ。忘れ物がないならそれ書いたら出るぞ」
百子は頷いて紙に視線を戻したが、彼女の目は笑っていない。陽翔はそんな百子を目撃したのは初めてで、背筋にそろそろと冷たい物が這っているような感覚を覚える。
「百子、何を書いたんだよ」
百子は逡巡していたが、封筒と紙を陽翔にすっと差し出す。落ち着きのない彼女を見て怪訝に思ったが、紙に書かれた内容を読んで思わず目を見開いた。