愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
腰を九十度に折って頭を下げると、隊長は頭をガリガリとかきながら「お前じゃなかったらスクワット百回やらせてたところだ」とぼやいた。

「……やりましょうか?」

「いらん。お前は余裕だろうが」

余裕とまではいかないが、懲罰にならないのは確かだ。

隊長は「それにしても」と意外そうな顔をこちらに向けてきた。

「仕事人間でクソ真面目なお前に、あんなに若い彼女がいるとはなあ」

叱るよりも茶化す方が面白いと踏んだらしい。俺はひとつ咳払いして答える。

「恋人じゃありませんよ。あれは遊真の――乙花の妹です」

乙花――その名前を聞いて、隊長の表情がぴくりと動いた。

「乙花の……。そうか。あの事故は悲惨だったな」

レスキュー隊に所属する前、俺と遊真はともに隊長の世話になっていた。

遊真の命を奪ったあの忌まわしい事故については、まだふたりの記憶に新しい。

町工場で起きた火災。当時、現場に一番近かった遊真の所属するレスキュー隊が第一出場した。

第二出場隊として俺や八尾さんが現場に到着したのは、彼らが建物内部に先行して五分後。

俺たちが進入の準備をしている最中、工場内の機材に引火し、大きな爆発が起きた。

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