愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
そして俺は、せめて助けられる命を助けたいと、今ここにいる。優秀なレスキュー隊員になることが母へのせめてもの弔いだ。

「それにしても、乙花の妹さんが元気そうでよかった。両親もいないんだろう? 兄貴の代わりによくしてやってくれよ」

俺の肩にポンと手を置く。

「もちろんです」

力強く頷きながらも、目を合わせられなかったのは、彼女が忌み嫌う消防官という仕事を辞められずにいるからだ。

この仕事に就く限り、彼女を幸せにはできない。

だが、今ここでこの仕事を辞めるわけにはいかないのだ。

亡くなった母のため、これから俺が救うであろう命のため、俺はこの仕事を続けたい。

強い意志を持ちながらも、心のどこかで彼女への申し訳なさを感じ続けていた。




それから彼女は、友人とともにカフェを開業し、日々一生懸命働いている。経済的にはもうすっかり自立した。

だが、俺に見せる笑顔は変わらずあどけない。

「北斗さん、見て!」

キラキラした表情で俺に新作メニューを披露する。

「うん。おいしそうだ。早く食べたい」

「ほかの料理もすぐ準備するから待ってて!」

ささやかながら幸せな同居生活を送っている。

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