愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
逃げ道がない――。

しばらくすると、店舗側のドアの隙間から、灰色の煙がじわじわと漏れ出してきた。

ここも安全とは言えなそうだ。視界がぼんやりと霞んでくる。心なしか息が苦しい。

じんわりと滲む汗。部屋の温度が上昇してきている?

できる限り身を低くして呼吸しながら、押し寄せてくる恐怖と闘う。

「北斗さん……」

彼が助けに来てくれると祈るしかない。

ぼんやりと薄れていく意識の中、遠くでサイレンの音が聞こえた。



***



署内で救助機材の点検をしていた俺は、突然流れてきたピーピーという司令音に顔を跳ね上げた。

【豊島区 火災入電中】

火災の通報が入ったのだ。耳にした隊員たちの間に緊張が走る。

そして再びけたたましい音が鳴り響き、本司令が通達された。

【出火報 豊島区長崎二丁目――】

消火を担当するポンプ隊、そして俺たち特別救助隊に出場司令が下される。

即座に防火服に身を包み、情報センターから現場の情報を受け取る。

救助工作車に乗り込みながら、俺はひっそりと息を呑んでいた。

火災の通報は、真誉の勤め先のビルだ。

「吉柳隊長!」

五十嵐も気がついたのか、物言いたげに車両の後部から助手席に座る俺の方に身を乗り出してくる。

俺は平静を取り繕いながら、無線で状況を確認をした。

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