愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
「正直言って、階級なんてどうでもいいから、生きていてほしかったです」

ちらりと振り向き、彼女を覗き見る。

その瞬間、目に入ってきたやるせない表情に、すぐに考えを改めた。

乗り越えてなんてない。彼女は俺以上に深く傷ついている。

当然だ、遊真はたったひとりの肉親だったのだから。

ただ悲しむだけじゃない、悔しさや虚しさ、やり場のない気持ちを抱えて苦しんでいる。

「……真誉ちゃん。遊真は、覚悟はしていたんだ。こういう仕事に就くからには――」

「そもそも、どうして自ら危険な職業に就くんですか。他人を助けるために自分が命を落とすって、おかしくありませんか」

静かに声を苛立たせる。

これまで真誉は、兄の仕事を全力で応援していた。名誉ある仕事だと、手放しで喜んでくれていた。それなのに――。

兄を失って、心のバランスが崩れているのだろう。ひどく危うい状態に見えた。

「北斗さんは、残された人の気持ちを考えたことがありますか? それでも今の仕事が大事だって、本気で思えるんですか?」

「真誉ちゃん……」

今の彼女にどんな正論を言っても届かないだろう。

< 81 / 155 >

この作品をシェア

pagetop