愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
味だけでなく、栄養やカロリーまで考えてくれる。

彼女の料理に和食や魚が多いのは、ローカロリーでしっかりタンパク質が摂れるメニューを考えてくれているからだ。

体を鍛えなければならない俺たちを――もう〝たち〟とは言えないかもしれないが――気遣ってくれているのだ。

「私、兄を応援したくて栄養学を勉強し始めたんです」

以前、遊真が自慢のように『あいつは俺のために栄養士になるんだって。かわいいだろう?』と語っていたので聞いたことがある。

「でも、もう作ってあげる人もいなくなっちゃって。なんのためにお料理を作るのか、わからなくなっちゃった」

彼女は苦笑してぶり大根を口に運ぶ。

「兄がいなくなってから、なにを作ってもおいしいと思えないんです」

そんな虚しい言葉を吐く彼女を見て、このまま放っておくわけにはいかないと思った。

愛する兄を失い、夢も目標も見失って抜け殻になっている。

『真誉のこと、頼むわ』――遊真の台詞が頭をよぎり、俺がなんとかしなければと強い思いに駆られる。

彼女が作った夕食をゆっくりと咀嚼しながら、三十分間、ずっと考えていた。

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