愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
彼女が苦笑する。食文化を学ぶ子たちだから、さぞ気合いの入ったチョコパーティーになるだろう。

「あ、でも、北斗さんにはもっと特別なの用意するつもりだから。楽しみにしてて」

「特別? これだけでも充分嬉しいが――」

「ダメ! 北斗さんには友チョコじゃダメなの。当日のお楽しみ」

「あ、ああ……」

こだわる彼女に驚きながら、俺はキッチンをあとにした。気持ちだけでも充分なのだが、なにを用意する気なのだろう。

翌日のバレンタインは一日勤務で、家に帰れたのは十五日の昼だった。

現場で働く消防士は朝八時半から翌朝八時半までの二十四時間勤務と決まっている。

しかし、仕事を上がる時間に出場が重なると、残業になってしまう場合がある。

その日、いつもより三時間程度遅く家に辿り着くと、迎えてくれた彼女は涙目だった。

「真誉? どうした、なにかあったのか?」

「その……帰りがいつもより遅かったから。お兄ちゃんにお祈りしてたの。北斗さんを守ってあげてって」

リビングに線香の香りが漂っていることに気づく。居間の仏壇にロウソクが灯っていた。

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