愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
余計にいたたまれなくなり、苦しみを上書きするように彼女を包み込む。

泣きながら待たせるようじゃ、遊真との約束を果たしたとはいえない。

兄を奪った消防官という職に就く俺では、彼女を心の底から幸せにはできないのかもしれない。

葛藤が伝わってしまったのか、彼女はハッとして顔を上げた。

「あの、北斗さん。お腹減ってない? もうすぐお昼だし」

話題を逸らすよう切り出す。無理をしているのがバレバレで、だが気遣いを無下にもできず、俺は「ああ」と頷き、腕を解いた。

「すぐに用意するから待っていて。このあと休む? 消化にいい食事の方がいいかな?」

「いや、昨晩は仮眠が取れたから大丈夫だ。普通に食べるよ」

夜中に出場司令が下れば、仮眠中だろうとすぐさま現場に出なければならない。だが昨晩は幸い何事もなく、それなりに睡眠が取れた。

彼女はキッチンに立ち粛々と調理を進める。集中していると不安も和らぐのだろう。

牛肉と野菜をたっぷり載せて作った韓国風ピリ辛粥を完食すると、彼女はおずおずと切り出した。

「あのね。渡したいものがあって」

彼女が棚から取り出してきたのは、綺麗にラッピングされた小箱だ。

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