敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
「未希?」

 不思議そうに声をかけられ、慌てて隼人さんの方を向く。

「大丈夫か?」

「すみません。ぼうっとしちゃって」

 反応が鈍かったらしい。隼人さんに心配をかけてはいけないと取り繕う。隼人さんは労わるようにそっと私の頭を撫でた。

「さすがに疲れただろうから今日はこのまま外で食べて帰ろう」

「い、いいえ。帰って用意しますよ! そんなに時間はかけませんから」

 彼の提案に対し、私は必要以上に拒否をする。気を使わせて料理をしないなんて、彼と結婚した意味からすると本末転倒だ。しかし隼人さんは納得してくれない。

「無理をしなくていい」

「していませんよ、本当に――」

「未希」

 言い聞かせるように名前を呼ばれ、私は言葉を止めた。彼は私と目線を合わせ、安心させるように微笑む。

「いいから、甘えておけ。未希が気に入りそうな店にするから」

 そういう問題ではないと言いたいのに声にならない。しばらく葛藤して私は頷いた。

 隼人さんの意思を優先させるべきだ。でも、だったら私はなんのために彼と結婚したんだろう。

 もしも……もしも隼人さんと結婚したのが水戸さんだったら、もっと自然な夫婦になれていたんだろうな。

 想像して胸がズキズキと痛む。けれど隼人さんを煩わせないよう必死にポーカーフェイスを装った。
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