敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
「ありがとうございます。大事な話を聞かせてくださって」

 私も笑顔で返す。すると隼人さんの手がそっと頭に伸びてきた。

「未希になら話してもいいと思ったんだ」

 それはどうして? 尋ねようとする前に隼人さんが口を動かす。

「ありがとう、奥さん」

 頬が一瞬で熱くなり、とっさに目を伏せる。自分の中であふれそうになる感情を反射的に抑え込む。自分の立場を忘れてはいけない。

「あ、あの。なにか吐き出したくなったらまた言ってください。いつでも聞きますから! 隼人さんも私に甘えてくださいね」

『妻を甘やかしたい俺の望みを叶えてくれている』

 甘やかしたいだけ? 隼人さんだって甘えたいときがあるんじゃないの?

 こうやって彼の話を聞くだけで寄り添えるのなら……。

「わっ」

「なら遠慮なく」

 思考を巡らせていると、素早く腰に腕が回され隼人さんの方に引き寄せられる。私は勢い余ってソファに両足を乗り上げ、行儀悪くも膝立ちする格好で彼に力強く抱きしめられた。

 結果的に隼人さんより視線が高い状態で私は彼を見下ろす形になる。

 驚きとこの体勢に心臓が強く打ちつけ、存在を主張する。鼓動が速く、胸の音が隼人さんに聞こえてしまうのではと気が気ではない。

 それでもすぐそばにある彼の頭に私はおずおずと手を伸ばした。いつも隼人さんがしてくれているのを思い出しながら、ぎこちなく彼の頭を撫でる。指の間をすべる髪は、想像以上に柔らかく滑らかだ。
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