敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
 どう言い訳するべきか、頭がうまく働かない。そんな私を制するように隼人さんは続ける。

「未希が嫌がることはしない」

「ち、違うんです。その……」

 そこで言葉を止める。どっちみち今話すことではない。私は隼人さんに自分から密着して彼の胸に顔をうずめた。

「元気になったら、ちゃんと話しますから」

 彼の顔を見ずに宣言する。いつもなら心臓がうるさくてどうしようもないのに、体調を崩しているからか彼の体温が心地いいからか遠慮なくくっつく。

「出て行きませんよ。隼人さんにおかえりなさいを言うのは私の、妻の仕事ですから」

 そう言って上目遣いに彼を見た。我ながら建前と本音をうまく織り交ぜたと思う。

「隼人さん、おかえりなさい」

 まだ言えていなかった言葉を告げると、隼人さんは不意を突かれた顔をしたあと切なげに顔を歪ませ、私のおでこに自分の額を重ねた。

「ただいま、未希」

 それからどちらからともなく唇を重ねる。驚くほど自然な流れで、私もこうして欲しかったのだと実感する。

 心細さも、寂しさも、不安も全部吹き飛んで満たされる。

 木下さんのときとは全然違う。恋って、人を好きになるってこんなにも感情を揺す振られるんだ。

 相手のためなら、なんでもしたい。喜んで、笑ってほしい。苦しくて切ないのに……。

 自分の振る舞いで相手がどう思うかばかり気にして動けなくなっていた私の本音を隼人さんは誰よりも大事にしてくれる。隼人さんを好きになってよかった。 

 隼人さんに身を寄せ、安心感に包まれながら私は静かに目を閉じた。
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