敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
 目が覚めると隼人さんの姿はなく、昨日の彼とのやりとりがどこまでが夢なのかわからない。

 もしかすると全部熱と私の願望が見せた幻だったのかな?

 ひとまず上半身を起こすと、くらりと頭が揺れた。熱は下がった感じはするが、だるさはまだ残っている。ベッドサイドテーブルにおいていた体温計に手を伸ばし、脇に挟んでしばし待つ。

 機械音と共に表示されたのは三十七度四分の数字で、微妙ではあるが平熱に戻りつつあった。

 仕事!

 ふと今日は金曜日で平日なのだと思い直す。熱がないなら出社するべきだ。慌ててスマホを確認すると午前七時前で、今から準備すればまだ間に合う時間だ。

 その前に隼人さんの朝食の準備を……。

 掛け布団をめくり体の向きをずらしたタイミングで部屋にノック音が響く。とっさに声が出ず、喉の調子を整えようとしたら先にドアが開いた。

「起きていたのか」

 現れたのは隼人さんで、ネイビーの襟付きシャツとジーンズというラフ組み合わせは完全にプライベート仕様だ。

「体調は?」

 こちらにゆっくり近づきながら隼人さんは尋ねた。

「大丈夫です。熱も下がりました」

 素早く答え、回復を証明するように笑顔を作る。しかし隼人さんは納得していない面持ちでベッドサイドまで来ると私を見下ろしてきた。

 こうして見ると隼人さんの髪は無造作に下ろされているだけではなく、シャワーを浴びたのか、かすかに湿っている。
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