敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
 ドキドキしながら見つめていると、不意に彼の手が私のおでこに伸びてきた。額に手を当てられ、隼人さんは熱が下がったのを確認するように触れる。

「下がったのならよかった。とはいえまだ無理をするな。篠田に連絡もしておいた」

 まさか部長に直接連絡されているとは思わず、身を縮めながらお礼を告げる。

「ありがとうございます。あの、隼人さんお仕事は?」

「俺も今日の午前中は休みにしている」

 そういえば彼は昨日、出張から帰って来たばかりだ。もっと労わなければと思っていたら先に隼人さんが口を開く。

「なにか食べられそうか?」

「あ、はい」

 昨晩は熱が高く食欲もなかったのでなにも食べなかったのだが、今は少しだけ空腹を感じる。このあと薬を飲むためにも、なにか胃に入れておいた方がいい。

「隼人さん、朝食は? 準備しますね」

 慌ててベッドから抜け出そうとすると、今度は私の肩に彼の手が乗せられ動きを制される。

「いいから。未希は休んでおけ」

「でも」

 そこで私は気になっていた件を口にする。

「隼人さん、昨日ちゃんと眠れましたか? その、私のせいで……」

 具体的な内容が言えずに口ごもっていると、隼人さんがふっと笑みをこぼした。

「心配しなくていい。未希の可愛い寝顔をすぐそばで堪能できて、俺も久しぶりによく眠れた」

「そ、それは……よかったです」

 あまりにも臆面なくさらりと告げられた内容に、照れる前に返事をする。恥ずかしさを誤魔化すため、髪を手櫛で整えていると静かに顔を近づけられた。

 私はきっと隼人さんのこの目に弱いんだ。
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