敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
「付き合う相手に口を出される一方で、相手も俺のことをシャッツィの社長の息子とか、後継者だからとかそんなふうにしか見ない連中が多いのにも気づいていた」

 美奈子さんも隼人さんを後継者として厳しく育てたと言っていた。彼の取り巻く環境は子どもでは重すぎるくらいの重責があったのだろう。

 そこで隼人さんは苦々しく笑った。

「情けない話、徳永の件で余計に頑なになったんだ」

 かける言葉が見つからず、胸が締めつけられる。そんな人ばかりじゃないというのは、傷ついた隼人さんにはきっと響かない。私がそうだったから。

「大事なのも見られているのも俺自身じゃない。実際に俺は空っぽで、けれど付き合ううえで相手にはなにかしらのメリットを示す必要があるんだと結論づけていた。社長の肩書きは便利だったよ。そうやって上辺だけでも割り切って、それなりの関係が築けたらいいと思っていた。結婚も同じだ」

 そう言って隼人さんは軽く息を吐いた。続けて私と視線を合わせ、口を開く。

「純粋に相手を想うことも、想ってもらうこともできないと思っていた。だから未希にも金を支払うと言ったんだ。未希にとってメリットと思えるような、俺から差し出せるものはそれくらいしかなかったから」

『今みたいに仕事と捉えて、俺の妻になってほしいんだ。もちろん報酬はしっかり支払う』

 そういえば隼人さんからとっさに恋人のふりを頼まれたときも〝仕事として〟と言っていた。

 割り切った、感情が伴わないのをはっきりさせたいからだと思っていたのに……。 
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