敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
「未希が仕事として結婚を受け入れてくれたものの、ずっと不安だった。未希は金が必要な素振りも、なにかに使っている様子もまったくなかったから」

 嘲笑を浮かべ話す隼人さんに、気持ちが揺れる。

「なんで? だって隼人さん……」

 不安ってなに? 私と結婚したのは偶然で、ご両親を納得させるためだったはずだ。相手が私でなくても隼人さんはきっと……。

「肩書きとか立場とかそんなの関係なく、俺自身を見て向き合ってくれる未希に何度も救われたよ。上辺や外側だけが必要だと冷めている俺に、中身が大事だって未希が証明していってくれたんだ。そんな未希に惹かれていったのに、臆病な俺は曖昧な態度しか取れなかった。雇用関係をやめようと提案もできず、それなのに踏み込めきれなくて、未希を振り回した」

 そんなことないと首を横に振る。声が出せず、目の奥が熱くて、胸が苦しい。

 だって彼の言い方は、まるで……。

「未希を愛している。初めてなんだ。俺のなにを差し出しても未希を幸せにしてみせるから、ずっとそばにいてくれないか?」

 感情と共に涙もあふれ出す。これは夢かなにかだろうか。

「私も隼人さんが好きです。好きで、そばにいたくて。でもその分、嫌われたり失望されたりするのが、怖かったんです。だから余計なことをしないように、仕事だって割り切ったほうがいいって思って……」

 雇用関係があることに安心していたのは私も同じだ。けれどいつの間にかその関係を超えたくて。線引きをしっかりするはずが、もっと隼人さんを知って近づきたくなった。
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