敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
「粗相をしたら、いつでもクビにできるようにですか?」

 依頼主と業者という関係と、社長と契約社員という関係では重さが違う。どちらも彼の手のひらの上なのは変わりないかもしれないが。

 私の問いかけに社長はわずかに眉尻を下げた。

「俺は君にそんな人間だと思われているのか」

「いえ、それは……」

 慌ててフォローしようとしたが、社長の顔にはかすかに笑みが浮かんでいた。

「いいさ。こうやって社員とじっくり話す機会はあまりないから貴重だと思っている」

 ああ、そうか。自分の仕事ぶりが評価されたと思っていたから、会社でのつながりがあったからなのだと知って、少しだけ傷ついているんだ。

 冷静に自分の心情を分析する。とはいえこの心の機微を相手に訴えてもしょうがない。

「新卒や中途を問わず、うちは常に入社希望者が多い。でも沢渡さんは、そこまでの魅力をシャッツィに感じないのかと」
「そんなことありませんよ!」

 社長の呟きに、私は即座に返した。

「シャッツィは素晴らしい会社だと思います! 仕事をしていると、自社の利益だけではなく、会社全体として未来を担う子どもたちのことを真剣に考えているのが伝わってきます。社会貢献や環境保全への取り組みもしっかりしていて、社員の働き方も柔軟ですし、私はシャッツィで働けていることを、すごく誇りに思います」

 正直な思いを吐露する。いつか経営陣か上層部に直接伝えたいと思っていたくらいだ。

 けれど、まさか社長相手に勢いのまま感情をぶつけることになるとは。ましてやここにはシャッツィの社員として来ているわけではないのに。
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