敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
「この前、用意してくれていた料理、どれも旨かったよ。とくに、あのハンバーグ型の鶏つくねが冷めても柔らかいのには驚いた」

「豆腐をつなぎに入れたんですが、お口に合ってよかったです。よかったらお好きな味や苦手なものなど教えてください。メニューのリクエストなども」

 聞きそびれていた料理について尋ねると、意外と丁寧に回答してくれた。書面で好みやアレルギーの有無などを聞いているが、実際に口に合うかは食べてもらわないとわからないので、こうして直接フィードバックをもらえるのはありがたいし次に活かせる。

 家への道を伝え、ふと会話が途切れた瞬間だった。私からぎこちなく切り出す。

「私も……ひとつだけ質問してかまいませんか?」

「どうぞ。俺ばかりじゃフェアじゃないからな」

 おそるおそる尋ねると、彼は穏やかに答えた。前を向く社長の横顔を見つめ、迷いながら先を続ける。

「社長は、どうして家事代行サービスを利用されているんですか?」

「業者としては気になるところか」

 私の緊張とは裏腹に、社長は口角を上げる。

「はい。だって社長、家事がまったくできないわけでも、苦手でもないですよね?」

 それまで即座に返ってきてい た返事が、一瞬途切れた。

「どうしてそう思う?」

 わずかに彼の声が低くなった気がする。そのせいで自分の発言を少しだけ後悔したが、今更だ。
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