敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
「お風呂の支度、すぐにしますね」

 マンションの玄関を開けるや否や、家事代行業者に気持ちを切り替え宣言する。といってもボタンを押して、タオルを用意するだけだ。

 洗濯物と食洗器にかけていた食器を片づけて、それから――。

「未希」

 不意に名前を呼ばれ、パタパタと忙しく動いていた私は足を止めた。

「未希だって疲れているだろう。そう慌てなくてもかまわない」

 ネクタイを外し、ジャケットを脱ぐ隼人さんがリビングから声をかけてくる。帰ってきて慌ただしかったかもしれない。

 急に手持ち無沙汰になった私は、身の振り方に迷う。まずは着替えるべきか。外の寒さが嘘のように空調が整えられている室内は、逆に熱く感じるほどだ。

「ちょっと話をしても?」

「あ、はい」

 隼人さんに促されるままに彼のそばに向かう。その前に彼はソファに腰を下ろし、私は素直に彼の前に立った。上を見上げた隼人さんと目が合う。

「そんなとこに立ってないで、座ったらどうだ?」

 隼人さんが小さく噴き出し、頬がかっと熱くなる。

「し、失礼します」

 隣に促され、私は少しだけ間を空けて彼の左側に腰を下ろした。夫婦とはいえこういったぎこちなさは、どうしようもない。

 隣から視線を感じるものの隼人さんはなにも言わない。妙な沈黙にちらりと横をうかがうと、不意にこちらを見ていた彼を視線が交わる。

「今日はお疲れ」

「隼人さんもお疲れさまでした」

 労いの言葉に私も素直に返す。
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