元カレと再会ワンナイトで愛を孕んだので内緒の出産をしましたが入れ替わったらバレました
「……頭のデトックスが必要だわ」
「で? でとっ?」
「ああ、なんでもないよ。……ひな、ちょっとお出かけしようか」
「こうえん!?」
「んー……公園じゃなくて、お寺に行こうと思う」
「おてら」
「うん。今日1の付く日だし、土曜日だし、ひょっとしたら楽しめるかも」

 先日、ふと通りかかった藤嗣寺。今日なら屋台が出ているかもしれない。屋台が1つ2つでも、ひなにとっては珍しいものだ。きっと喜ぶはず。

 それに、あの天井の高い御堂の中でこの煩悩をデトックスしたい。モヤモヤを無くしてリセットしたいのだ。

 私はひなを自転車の後ろに乗せて、藤嗣寺を目指した。

 1の付く日とあって、外から見ているだけでも、たくさんの人が参拝に訪れているのがわかる。

「あ! ママ、ベビーカステラだ!」
「ほんと、屋台出てるわね。ひな、ここで礼をするのよ」
「れい?」
「門をくぐる前にお寺に向かってペコってして?」

 ひなが可愛くペコっとしている。

「そうそう。じゃあ入ろうか」

 境内にはベビーカステラとどんぐり飴の2つの屋台が出ていた。ひなは大喜びで屋台に向かっていったが、先にお参りを済まさなくてはならない。

 寺務所に連れていき、ひなの分のロウソクとお線香を買おうとしたが、ひなの小さな手では持てないことに気がついた。

「どうしようか……」

 お線香の箱の前で困っていると、寺務所から前回親切にしてくださったお坊さんが出てきた。
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