振り返って、接吻
それなのに、教室に入るところでわたしたちはばったり顔を合わせてしまった。
そのうつくしい顔を見ただけで吐きそうなくらい嫌だったけど、負けを認めた顔を見せるのはもっと嫌だ。
明らかに顔を合わせたのに、何事もなかったかのように彼の目の前を通り過ぎようとする不審なわたしに、いくら朝は不機嫌な由鶴とはいえ、挨拶をしてきた。
「、おはよ」
目をこすりながらいつも以上に低い声を出す由鶴は、いつもの朝と変わらない。
だけどわたしから挨拶しにいかないのをちょっと疑わしげに薄目で見てきた。普段なら由鶴が嫌がるくらいのテンションで挨拶しているからだ。
どうやら彼は、試験の結果を見に行ってもいないらしい。そんなの毎回の様子なのに、きょうは異常に腹立たしかった。
どうして、試験の順位に何のこだわりもない人が1位をとれるわけ?簡単だった?
わたしが敏感になりすぎてるだけって頭では理解しているけど、中学生のわたしの心はそんなに冷静沈着ってわけでもない。
嫌味を込めて、それから、自分の余裕も見せたくて、こちらから話を振った。
「ゆづ、試験1位だったよ、おめでとう」
「そうなの?ありがとう」
さらり、いつも通りに無機質な言葉が返ってくる。
あと数時間後の目が冴えた由鶴なら、わたしの声が震えていることに気付いてしまっただろうけど、弱すぎる朝の由鶴はあっさりスルーした。
その余裕のある姿がどうしようもなくムカついて、わたしはこれまで溜めてきた幼馴染への嫉妬がぼわっと燃える音を聞いた。