妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
 私の言葉に、アグナヴァン様はゆっくりとお礼の言葉を呟いた。
 彼の頬は少し赤くなっている。私の言葉に照れているようだ。
 その口から出たのが単調なお礼であるというのもそれの証明だろう。今の彼は恐らく、動揺しているのだ。

「その……どうか、これからもよろしくお願いします。アグナヴァン様が望むなら、私は大丈夫ですよ。いつでも覚悟はできていますから」
「それは……」
「……さあ、食べるのを再開しましょう。いつまでも手を止めていると料理が冷めてしまいますから」
「いや、だが……」

 私は、照れ隠しに料理を口に運んだ。
 そんな私に対して、アグナヴァン様はぽかんとしている。
 こうやって見ていると、彼の凛々しい王子としての一面が嘘のようだ。そんな一面もあるからこそ、私は彼のことが好きになったのだろうとは思っているのだが。
 そんなことを考えながら、私はアグナヴァン様とともに生きるこれからの幸福な日々に思いを馳せるのだった。


END
< 118 / 118 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:50

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。 なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。 普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。 それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。 そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。
表紙を見る 表紙を閉じる
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※この作品は「アルファポリス」にも掲載しています。
表紙を見る 表紙を閉じる
侯爵家の令嬢であるリルティアは、王太子である第一王子と婚約をしていた。 しかしある時、彼がある令嬢と浮気している現場を目撃してしまった。 リルティアが第一王子を問い詰めると、彼は煮え切らない言葉を返してきた。 彼は浮気している令嬢を断ち切ることも、妾として割り切ることもできないというのだ。 それ所か第一王子は、リルティアに対して怒りを向けてきた。そんな彼にリルティアは、呆れることしかできなかった。 それからどうするべきか考えていたリルティアは、第二王子であるイルドラと顔を合わせることになった。 ひょんなことから悩みを見抜かれたリルティアは、彼に事情を話すことになる。すると新たな事実を知ることになったのである。 第一王子は、リルティアが知る令嬢以外とも関係を持っていたのだ。 彼はリルティアが思っていた以上に、浮気性な人間だったのである。 そんな第一王子のことを、リルティアは切り捨てることに決めた。彼との婚約を破棄して、あらたなる道を進むことを、彼女は選んだのである。 ※この作品は「アルファポリス」にも掲載しています。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop