妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
 闇の魔力が、どれ程の効力があるかはわからない。
 しかし、一か月もかかっていれば、間違いなく手遅れになるだろう。それ程、時間はないと考えるべきだ。
 だが、そうなるとこちらの王国側から何かをするのは難しい。どうにかするのは、不可能とさえいえるだろう。

「……恐らく、私達は何か起こってから動くしかないでしょう。もちろん、私も罪のない命が費えるのを見過ごしたいとは思いません。ドルマニア王国への支援の準備はしておきましょう。もっとも、こちらも慈善事業でそれらの事柄を実行できる訳ではありません。そこまで大きな支援はできないかもしれませんが」
「……仕方ありませんか」

 アグナヴァン様の言葉に、エルムルナ様は明らかに落ち込んでいた。
 ただ、彼女も理解はしているのだろう。隣国であるスウェンド王国が、ドルマニア王国に過干渉することはできない。それは、仕方ないことなのだ。

「エルムルナ様、気を落とさないでください。私も、できる限りのことはやるつもりです」
「殿下……申し訳ありません」
「いえ、お気になさらず」

 アグナヴァン様は、本当に優れた人である。
 私は、改めてそう思っていた。王族としても紳士としても、これ以上に頼りになる人はいないのではないだろうか。
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