妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
「……困ったものだな」

 エルムルナ様は部屋を去ったが、私はアグナヴァン様の元に留まっていた。
 それは、彼からの要望だ。私と色々と話したいことがあるらしい。

「フェルーナ嬢、正直な話をすると、こちらからできることは中々に少ない。ドルマニア王国とは同盟国であり、助ける義理はあるのだが、どこまでできるかはわからない。結局の所、大局を決めるのは父上だ。父上は優しい方ではあるが、いざという時は決断する力を持っている。この場合、賢明な判断とは何か……」
「ドルマニア王国を切り捨てる決断も、あり得るということですね……」
「ああ、そういうことだ」

 アグナヴァン様は、かなり困っているようだ。
 彼個人としては、ドルマニア王国の人々の命が脅かされるこの事態を収拾したいと思っているのだろう。
 だが、国としてその決断ができるのかは別である。彼の父親であるスウェンド王は、非情ともいえる判断をする可能性があるのだ。

「……アグナヴァン様、それは仕方ないことです。あなたが責任を負うべきことではありません」
「もちろん、わかっている。しかし、簡単に割り切れることではない」
「……エルムルナ様も、同じようなことを言っていました」
「む……」

 私は、思わず苦笑いを浮かべていた。
 彼もエルムルナ様も、根本的にいい人すぎるのだろう。それは素晴らしいことであると思えるが、国や人を率いるものとしては少々邪魔なものなのかもしれない。
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