神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「今までも、君と同じようなことを僕に言った人がいたよ」

「…」

「でもそいつらは、僕の姿を見て悲鳴をあげた。バケモノだってね。…君もそうだろう?」

…何も言い返せなかった。

私だってマシュリさんの姿を見て、思わず悲鳴をあげてしまったから。

「君は確かに、アルデン人でも受け入れられただろう。でもそれは、君が人間だからだ。僕は人間じゃない」

「そんなことはありません…。あなただって、人間じゃないですか」

受け入れられないはずがない。

「あれを見て、よく僕を人間だなんて言えるね。気休めも、ここまで来たら嘘臭いよ」

マシュリさんは、吐き捨てるようにそう言った。

「世の中は捨てたものじゃないって言ったね。確かにそうなのかもしれない。でも…僕が生きているのは『この世』じゃないんだ」

「…マシュリさん…」

「君の理屈は通じないよ。何故僕がここにいるのか、教えてあげようか?」

マシュリさんがここにいる理由…?

「追い出されたからだよ。『向こうの世界』で散々石を投げられ、唾を吐きかけられ…挙げ句、バケモノは出ていけと追い立てられて…。それで『こちら側』に来たんだ」

「…」

「『こちら側』に来たって、僕の居場所なんて何処にもない。僕は見ての通りのバケモノだからね。向こうもこちらでも、世界の何処にも、僕が存在して良い場所なんかないんだ」

…そんな…。

そんな…悲しいことを…。

「だからこうして、目立たないようにひっそりと、一人で生きていくしかない…。そうすれば、かろうじて生きていくことを許してもらえるから」

「…」

「…それにね、シュニィ・ルシェリート。僕にはちゃんと…居場所が、家があるんだよ」

「…え?」

マシュリさんは、打って変わって静かな声でそう言った。

居場所がある…?

「それなら…どうして」

「居場所を守る為だ。君をここに連れてきたのは…僕の帰るべき家を守る為なんだ」

「…」

…どうしてだろう。

帰るべき家があると言いながら、何故そんなに悲しそうな顔をしているのか。

「聞いても良いですか。あなたの…居場所というのは…」

「…『HOME』だよ。知ってる?」

『HOME』…?

何処かで、聞き覚えがあるような…。

しばし考えて、そして思い出した。

「まさかあなた…神聖アーリヤット皇国の…?」

「…さすがに博識だね。そうだよ」

アーリヤット皇国皇王直属軍。通称『HOME』。

マシュリさんは、『HOME』に所属する兵士だったのか。
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