神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
改めて俺達は、シュニィが連れ去られた現場…シュニィの執務室…にやって来た。

書類や筆記用具が一部、床に落ちている以外は…綺麗に片付けられた部屋である。

シルナの学院長室とは訳が違うな。

イレースの部屋みたい。綺麗に整理整頓してあって。

…しかし…。

「エリュティアさんでさえ何も見つけられないのに、俺達が家探しして、何か見つけられるんですかね」

誰もが思っていたけど、でも口に出さないようにしていたことを。

ルイーシュが、容赦なく口にした。

…言うなよ、それをさ。

元暗殺者組みたいな性格してやがる。

「あのなぁ…。そういうことは、思っても黙ってるもんだぞ」

相棒のキュレムが、すかさずルイーシュを咎めた。

よく言った、キュレム。

「だって、そうじゃないですか。エリュティアさんがあれだけ探して見つからないって、相当ヤバいですよ」

俺だってそう思うよ。

「でも、諦めるなんて選択肢はないだろ?」

「諦めろとは言ってませんよ。…断絶空間に送られたんだとしても、もう少し『痕跡』が残っていそうなものですけど。それさえないんですから」

「…まぁ、そうだが…」

空間魔法のプロであるルイーシュが言うんだから、説得力が違うな。

あまりにエリュティアの辿れる「痕跡」が残っていないものだから。

もしかしてシュニィは、時空の狭間である断絶空間に送り込まれたんじゃないか、と…。

俺も…つい最近までは思っていたのだが…。

それにしたって、これほどに「痕跡」が残っていないのはおかしい。

ルイーシュの言う通りだ。

「じゃあ、ルイーシュ君はシュニィちゃんが何処にいると思うの?」

シルナがルイーシュに尋ねた。

「俺も超能力者じゃないんでね、そこまでは分かりませんけど…。ただ、どうにも…」

「…ただ?」

「凄く見当違いなことしてる気はするんですよね。空っぽの重箱の隅をつついてると言うか…。…中華料理屋でフレンチのメニュー探してるような」

…どっかで聞いたような台詞だな。

令月もそんなことを言っていた。

砂漠で魚を探してるようなものだって。

俺達はもしかして、探す場所を間違えてるんだろうか?

シュニィは俺達が探してるより、もっと違う場所にいるのかも…。

でも、それが何処なのか分からないんだよ。

情けないことにな。

「気持ちは分かるが、結局は俺達の手が届くところを探すしかないんだから」

と、ジュリスが言った。

「愚痴は飲み込んで、精々空っぽの重箱の隅をつついて手がかりを探そうぜ」

「…はぁ、仕方ないですね」

さすがジュリス。良いこと言うよお前は。

部屋の中を隈なく探し、それこそ犯人の頭髪一本でも落っこちてないもんかと目を凝らしてみたが…。

…例え髪の毛一本見つけたって、それが犯人のものかは分からないよなぁ。

シルナの抜け毛かもしれないし?

…すると。

「羽久。何か気づくことはないか?」

「…え?」

ジュリスが、真面目な顔で俺を見つめてそう聞いてきた。
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