静穏総長も、時には激しく愛したい
すると奏さんは「睦、澪音を頼んだよ」と、一人で前に出た。
たった一人きりで、不良たちの前へ――
「悪いけど、睦は返してもらう」
「俺の組織からの脱退だ。”はい、そうですか”って素直に返すわけないだろ」
「分かってる」
凛とした声を出す奏さんの背中を見て、睦さんが「総長?」と。声を震わせる。
だけど、その瞬間に奏さんは、
ドサッ
なんと、地面に両膝をついた。
「な、総長!」
「奏さん!」
何かされたわけじゃない。
奏さんは、自分から膝をついたんだ。
でも、なんで⁉
夕暮も同じことを思ったのか、解せない表情を浮かべている。
「千秋奏、何の真似だ?」
「見ての通りだ。部下の落とし前は、総長である俺がつける。俺の事は好きにしろ。ただし、先に二人を解放するのが条件だ」
「とか何とか言って、お前も逃げるつもりだろ」
「逃げる、ね……」
すると、奏さんの声色が変わった。
この場の空気を包み込むような、優しい声。