冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 それなりに大きな教室だったが、蛍と美理がずっと一番を争う形だった。コンクールでもいい成績をおさめられるようになり、中学三年生のときに大きなチャンスが巡ってきた。

「若手の登竜門とされる国際コンクールにエントリーしてみないか?と声をかけてもらえたんです」
「あぁ、日本人が入賞するとテレビでも取りあげられたりしているな。すごい実力じゃないか!」
「エントリーと入賞の間の差はものすごく大きいんですけどね」

 まるで入賞したかのような反応を見える左京に蛍は苦笑を返す。

「しかも私は結局、エントリーすらできませんでしたし」
「どうしてだ?」
「海堂家が……」

 蛍の母は治郎も喜ぶだろうと思って、深く考えずに話したのだろう。もしくは国際コンクールに参加するためにははかなりの費用がかかるので、治郎の援助を期待したのかもしれない。

「海堂治郎が反対したのか?」
「どちらかといえば、芙由美さんでしょうか」

 反対したのは治郎ではなく芙由美だった。左京も言ったとおり、あのコンクールにはメディアもそれなりに注目している。芙由美は蛍の顔と名前が話題になることを恐れたのだろう。
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