冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「これをきっかけに海堂家は私をあまり自由にさせておくのは危険だと考えたようなんです。京都を離れ、東京の全寮制の高校に進学させられました」

 バレエもやめされられ、美理とも離ればなれ。おまけに蛍が京都を離れたとたんに母が亡くなった。死因は急性心筋梗塞。もし倒れたときに自分がそばにいたら……。その思いはどうしても消すことができない。

「東京では、なんの気力もなく幽霊みたいに過ごしていました。海堂家はそれで満足なんでしょう?って、少しヤケになっていたのかもしれません」

 夢を持つこともなく、誰とも深く関わらず。

「つらい過去を思い出させて申し訳なかった」

 やや迷うそぶりをしてから、左京はまっすぐに蛍を見た。

「けど、話してもらえて嬉しい。俺は君を知りたいと思っているから」

(ひとりでいいと思っていたのに、左京さんに会って……誰かと心を通わす楽しさを思い出してしまった)

 誰かと親しくなるのは楽しくて、少し怖い。失う痛みをよく知っているから。

「もし叶うなら、一度でいいから君が踊る姿を見てみたいな」

 甘く柔らかな彼の笑みが蛍の胸に染み入る。幸せと不安が同じだけ積もっていく。
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