冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 左京の顔が苦しそうにゆがむ。かすかに震える声で蛍は続けた。

「もっと早く話すべきことでした」

 海堂家は左京が蛍を守ったところで恩なんか感じないだろう。自分には左京が身体を張って守るほどの価値なんかない。薄々気がついていたのに、言えなかった。

「ひとりで平気。そんなふうに強がっていたけれど、やっぱりひとりきりで死ぬのは怖くなって」

 赤霧会にさらわれたところで、治郎も誰も助けになんかこない。そんな場面が容易に想像できてしまって恐怖に脚が震えた。

「左京さんの『必ず守る』という言葉に、すがってしまいました」
「……蛍」

 彼の腕が伸びてきてグッと強く抱き締められる。その温かさに思わず涙がこぼれそうになった。

「海堂治郎が君をどう思っているのかは俺にはわからない。だから気休めは言えない。けどな、ひとつだけ確かなことがある」

 蛍を抱き締める彼の腕に力がこもる。

「君はひとりじゃない。俺という家族がいるだろう」
「家族?」
「あぁ。蛍のことは俺が必ず守る。警察としてではなく、夫としてだ」

 きっぱりとしたその言葉に蛍の瞳が潤む。糸が切れたようにポロポロと涙があふれた。
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