冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 たった今、彼の発した言葉を何度も何度も確かめるように思い返す。

(これは円満な夫婦の演技……それとも?)

「蛍?」

 顔をのぞきこんできた彼と視線がぶつかる。その瞬間にはっきりと自覚した。

〝誰か〟と親しくなることが楽しかったんじゃない。相手が彼だったから、だから幸せを感じた。まだ知り合って間もないけれど、左京はもう蛍にとって特別な人になっている。

(この指輪はきっと永遠の誓いじゃない。でも、許されている間だけでも)

「ありがとうございます。大切にします」

 自然と笑顔がこぼれた。左京の両手が蛍の頬を包み込む。

 そのままコツンと額がぶつかる。ほんの少し視線をあげれば、彼の美しい瞳がそこにあって……瞬きもできない。

「キスをしてもいいか?」

 少しかすれた声はやけに艶っぽくて、蛍をこれでもかというほどに翻弄する。

「あ、えっと。前は許可なんか取らずに勝手にしたのに」

 照れ隠しに、ついかわいげのないことを言って唇をとがらせた。

(でも、そうだよね。初めてじゃない)
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