冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 誠実そうな彼の瞳に、蛍は乾いた笑みを浮かべる。

「おやすみなさい」

 潜り込んだひとりきりのベッドは、ひんやりと冷たくて寂しさがつのった。

(左京さん、演技上手なんだな)

 蛍の体調不良を心から心配している顔だった彼を思い浮かべて、苦笑を漏らした。

 考えたくないのに、次から次へと左京との時間が蘇ってくる。

 先のことはわからないけど今の自分と彼の間には温かな愛が芽生えている、蛍はそう信じてしまっていた。恋愛経験ゼロな蛍を手懐けることなど、彼には簡単な仕事だったのだろうか。

 胸が苦しくてつぶれそう。だけど、どこかに冷静な自分もいて「仕方ない」と諦めた目をしていた。

 左京が出世を望むのは父と母、大事な家族のためだ。知り合って間もない、押しつけられた偽装結婚の相手である蛍より優先するのは当然のこと。

(左京さんは最初から『出世のため』と教えてくれた。私を騙したわけじゃない)

 自分は、浮かれて勘違いをして勝手に落ち込んでいるだけだ。

「左京さんに好きになってもらえるかも……本気でそう思っていたなんて恥ずかしい」

 泣きそうな声でつぶやいて、蛍は頭から布団をかぶった。








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