冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 唯は自分のネイルに視線を落とす。少し迷うそぶりを見せてから顔をあげた。

「誰にも話していないことなんですけど、私親指の爪に生まれつきの欠損があって……人に見られるのも嫌だし、視界に入ると自分のテンションもさがるんです。だから誰になにを言われてもネイルをやめる気はありません」

 初耳だったのでとても驚いた。

「そんな事情があったの?」

(私って本当に未熟な人間だったんだな。相手を知る努力もせずに一方的に決めつけて……)

 唯は自分とは違うタイプの子で相容れないと、勝手に判断した。心のどこかでファッションや恋を楽しんでいる彼女に嫉妬もしていたのだと思う。

 落ち込む蛍に唯はやや慌てたように言葉を重ねた。

「お願いだから謝罪とかしないでくださいよ。それをされると、こっちもこれまでの嫌がらせを謝らないといけなくなるし……」

 たしかに彼女にはチクチクと意地悪をされた。でも、最初のきっかけを作ったのは蛍のほうだったのだ。

「ううん。今さらでも謝らせて。傷つけてごめんなさい」

 蛍は彼女に頭をさげた。唯はふぅと細い息を吐く。
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