冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「なんか最近、大槻さん変わりましたよね。……いいご結婚をされたんですね」

 さらりと言われて仰天してしまった。

「え、えぇ? 知ってたの?」
「この前、課長がペロッと喋ってましたよ。大槻さんはプライベートに干渉されるの苦手そうだから、みんな聞かないだけで」
「……そうだったんだ」

 職場の仲間は自分が思う以上に蛍のことをわかってくれているし、気遣ってくれていたのかもしれない。自分の無知さが恥ずかしくなる。

「さてと。のろけを聞いてあげる気はないので私は本当に帰りますね」

 フレアスカートをひるがえして踵を返した彼女に、蛍はもう一度礼を言った。すると、唯は立ち止まり振り返った。

「私もこれまでのこと、申し訳ありませんでした。ずっと大嫌いだと思ってましたけど、最近の大槻さんはそんなに嫌いじゃないです。それじゃ!」

 早口に告げて、バタバタと彼女は帰っていった。

(同僚とお喋りをしながら残業なんて初体験だったな)

 絶望の底にいる気分だったけれど、意外すぎる人に力をもらってしまった。

『最近の大槻さんはそんなに嫌いじゃないです』

 彼女の言葉を素直に嬉しく思った。
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