冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 蛍が変わったとすれば、それはやっぱり左京のおかげで……。

(困ったなぁ、嫌いになることもできないなんて)

 思わず苦笑いがこぼれる。

 彼の本音を知ってしまった今、いっそ憎んでしまえたら楽になれるのにそれもできない。左京と出会わなければよかったとは思えないのだ。

 ふとデスクの上のスマホに目を向けると、新しいメッセージを受信していた。手に取って確認する。送り主は左京だった。

【今日は残業で遅くなる】と蛍から送ったメッセージへの返事だろう。

【了解。俺も今日はかなり遅くなるから、帰宅時と帰ってからの戸締りには気をつけろ】

 彼の『遅い』は日付をまたぐことを意味している。残りの仕事を終わらせてから帰っても、きっと蛍の帰宅のほうが早いだろう。

 ホッと胸を撫でおろしてしまった。

(先に眠ってしまったふりをすれば、今夜は顔を合わせなくて済む)

 左京を避け続けていてもなにも解決しない、それはわかっているけれどどうしていいのかわからないのだ。
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