冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 菅井家の目的は〝蛍を囮に使ってでも赤霧会をつぶすこと〟で、それはつまり蛍の身になにかあっても構わないということだろう。

 左京もそれを受け入れているという事実は、思い出すたびに蛍の傷口を広げる。

(今のまま左京さんのそばにいたら危険な目にあう?)

 かといって、ほかに行くあてもない。以前住んでいたマンションは解約しているし、新婚の美理の家にお邪魔するのも無理だ。彼女を巻き込むことは絶対にしたくない。

 そもそも左京と離れてひとりになったら、すぐに赤霧会につかまる可能性もある。

(まさに詰み、ってやつね)

 どちらを選んでも危険なら、囮として警察の力になるほうが世のため人のためかもしれない。

(左京さんの役にも立てるかな)

 結論はまったく出ないまま、蛍はどうにか明日の朝が締切の仕事を終えた。

 フロアの電源をすべて落として帰ろうとしたところでスマホが鳴った。

 左京かと思ったが、画面に表示された名前は晋也だった。

(如月さん? こんな遅い時間に珍しいな)

「もしもし」
『すみません、蛍さん。急ぎでお話したいことがありまして、今どちらですか?』
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