冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 スマホの向こうで晋也はひどく焦っている様子だった。なにかあったのだろうか。

「まだ会社です。今から帰るところですけど」
『では、そちらにお迎えに行ってもいいでしょうか。帰りはお送りしますので』

 蛍の言葉にかぶせるようにして晋也が声をあげる。ひとりより彼と一緒のほうが安心だし、断る理由はなかった。

「わかりました。ではお待ちしていますね」 

 晋也の車は十分もしないうちに蛍の会社の前に到着した。

「わざわざ来ていただいてすみません」
「いえ。例の件もありますし、夜遅くに蛍さんをひとりで歩かせるわけにはいきません」

 蛍が助手席に乗ると、彼は車を走らせた。ふと気がついて蛍は尋ねた。

「車、買い替えたんですか?」

 今日の車は国産メーカーの黒のSUV。晋也はずっとシルバーカラーのセダンに乗っていたはず。

「えっ、あぁ、はい。飽きてしまったので」

 少し意外に感じた。以前の車は高級なドイツメーカーで、憧れの車をやっと手に入れたと喜んでいたのをよく覚えていたからだ。今日の車はよく見かける大衆車で、車好きの彼の好みではなさそうに思う。

(使い勝手を重視することにしたとか?)
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