冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 きっと車に乗らない蛍にはわからない別の理由があるのだろう。そう考えて深く追及はしなかった。

(どこに向かっているのかな)

 気になったけれど、晋也は険しい表情で黙りこくっているので聞けなかった。

 三十分ほど走ったところで晋也は車を停め、「こちらの店です」と蛍を案内した。

 初見では絶対にわからない入口からエレベーターで最上階にあがる。ラグジュアリーな会員制のバーだった。政治家秘書という職業柄、晋也はこういう店をよく知っている。

(私、会社帰りの普通の格好だけどいいのかな?)

 夜景を楽しめる窓側の席に座っている客はみんな、それなりにドレスアップしている。

 通されたのは奥の個室で、先客がいた。

「え?」
「ものすごくお久しぶりね、蛍さん」

 きちんとセットされたショートヘア、光沢あるブラックワンピースの胸元に大粒のルビーが輝いている。年は五十代半ば。決して若作りはしていないのに華やかで若々しい。

「……芙由美さん」

 治郎の妻、芙由美だった。一見にこやかでも目は笑っていない。蛍への嫌悪がありありと浮かんでいる。

 頼んだ飲みものが届けられると、彼女はすぐに話し出した。
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