冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「如月を責めないであげてね。私がどうしてもと命じたのよ」

 晋也は申し訳なさそうに身を小さくしている。

「はい」

 責めるつもりはない。晋也が雇い主の意向に従うのは当然のことだ。

 芙由美はスッと身を乗り出すようにして蛍を見る。

「本題に入りましょうか。あなたも私と長く一緒にいるのは嫌でしょうし」

 肯定はしないが否定もしづらいので黙っておく。

「はっきり言うわ。蛍さん、しばらく海外にでも行ってくださらない?」
「え?」

 思いがけない話で、すぐにはのみこめなかった。芙由美は「鈍いわね」とでも言いたげなため息をついた。

「赤霧会とかいうヤクザにあなたがつかまると色々と面倒なのよ。大事になったらきっとメディアも騒ぐでしょう」

 そこまで聞いて、やっと彼女の主張が理解できた。

「私が海堂治郎の隠し子だと世間に知られるのを恐れているんですか?」
「そのとおりよ。あなたは知らないかもしれないけどね、夫が今の地位にあるのは海堂の名前のおかげ。あの人自身はなんの力もないの」

 辛辣だが間違えてはいないのだろう。治郎は芙由美の父である実光の地盤をそのまま引き継いでいたはずだから。
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