冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「だからこそね唯一の武器である『家庭的で庶民派でクリーンな政治家』っていうイメージは大事なのよ」

 芙由美はお嬢さま育ちだが決して世間知らずではない。政治家の娘として育ち、有能な政治家の妻になった女性だ。

「私たちの世界ではありふれた話だけど、有権者の国民はそれで納得なんかしてくれない。隠し子なんてイメージダウンもいいところよ」

 芙由美はまっすぐに蛍を見て、ためらいもせずに告げた。

「かわいそうだけどね、蛍さんが人質になっても海堂家としては助けてあげられる保証がないの」

 保証がない、彼女にしては優しい言葉を選んでくれたのだと思った。

(ようするに、海堂治郎の名に傷がつくくらいなら私を見捨てる。そういうことね)

 自分に人質としての価値がないことは薄々察していたのでショックは受けなかった。

「この提案はあなたへの情けよ。もちろん向こうで困らないだけのお金も用意してあげる」
「で、ですが、国内でも私の安全は菅井さんが」

 知ってしまった菅井家の思惑のことが頭をよぎりながらも左京の名を出すと、芙由美はおもしろいことを聞いたという顔で目を瞬いた。それからぷっと噴き出す。
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