冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「父娘揃って甘いわねぇ。治郎さんも『菅井家に任せておけば安心』とでも思っているんでしょうけど……教えてあげましょうか」

 芙由美はにっこりと笑って言った。

「この国でもっとも信用しちゃいけない人種は、政治家と官僚よ」

 なにも言い返せなくて蛍は唇をかむ。

 実際に菅井家は蛍の安全なんてどうでもいいと考えていた。芙由美は知らないはずなのに、さすがだ。

「おそらくね、偽りの旦那さまよりは私のほうがまだ、あなたの身を案じてあげていると思うわよ。命が惜しかったら国外に逃げなさい」

(赤霧会につかまらないよう海外に行く……?)

 それがいいことなのか、実現可能なのか。考えがまとまらず、すぐに答えることなんてできなかった。

 芙由美は席を立ち、蛍を見おろす。

「今すぐに返事をとは言わないわ。考えてみてちょうだい。また如月を通じて連絡するから」
「……はい」
「今夜のことは私の独断で治郎さんは知らないわ。だけど、あの人は私には決して逆らわない。知っているでしょう」

 芙由美の意向は海堂家の意向、そう言いたのだろう。

「じゃあね」

 芙由美はピンピールをカツカツと鳴らしながら去っていった。
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