冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 残業に島との密談。

 すべてを終えて帰宅したときにはもう日付が変わっていた。蛍はもう眠っているだろう。

 起こさないように静かに廊下を歩く。一番奥が左京の部屋、最近はふたりの寝室にもなっている。その手前が蛍に『自由に使っていい』と渡した部屋だ。

 ゆうべは体調が悪いからと蛍はこっちの部屋で休んでいた。

 今夜はどっちにいるだろうか。

 自分の部屋にいてほしいと思いながら、静かに扉を開けたがそこには誰もいなかった。思わず深いため息がこぼれる。

(やはり……避けられているのか)

 かなり迷ったすえに左京は来た道を戻って蛍の部屋の前に立った。

 おそるおそる扉を開け、足音を立てないよう彼女に近づく。蛍はこちらの顔など見たくないのかもしれないが、左京は一目だけでも彼女の顔を見たかった。

 ゆうべからずっと顔色が悪かったことも気にかかっていたし、先ほどの島の話は左京の不安をおおいに煽った。

 蛍の安全にはこれまで以上に注意を払わなくてはならない。

「よかった、無事に帰ってたんだな」

 彼女の額にそっと手を当ててみる。熱などはなさそうで少し安心する。
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