冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 駅前から少し離れてしまい人通りも少なくなってきた。これでは、ますます振り切るのは難しそうだ。彼も同じことを考えたのだろう。

「作戦を変える」

 軍隊の命令みたいな口調で告げて、彼は通りの角を曲がる。

(どこへ行くんだろう)

 居酒屋やカラオケ、スナックのような店が並ぶ歓楽街に入った。しばらく歩き、とある場所で彼は足を止めた。蛍は瞳だけを動かし、尾行男の動向を確認する。彼もスマホを見るふりをしてとどまっている。

「あ、あの、どうするつもりなんですか?」

 蛍は小声で彼に尋ねた。まけていないのに、なぜ足を止めたのだろう。

「ここに入ろうか」
「え?」

 彼の言葉で蛍はようやく目の前の建物を見た。古ぼけた小さなビル、紫とピンクの文字で書かれた看板は昭和レトロなムードが漂う。

(ホテル……ってえぇ?)

 ようやく気がついた。ここはいわゆるラブホテルと呼ばれる場所だろう。

「な、なにを言って」
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