冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 グッと、キスがもう一段深くなった。ざらりとした彼の舌が上顎をなぞり、互いの唾液が混ざる。唇が触れるだけのキスとは全然違う。

 途端に生々しくなった行為に蛍は強い恐怖を覚えた。力いっぱいに彼の身体を押しのけようとする。だが男はびくともせず、逆に蛍を脅すような低い声を出した。

「頼むから黙って従ってくれ。痛い目にあいたくなきゃな」

 自分を尾行しているらしい帽子の人物、たった今隣にいるこの男、どちらが悪人で誰を信じたらよいのか全然わからない。
 実は共犯でどっちも悪人。頭に浮かんだその推理が一番正しいように思えてくる。

 男は蛍の肩を抱いたまま自動ドアからホテルに入る。普通のホテルとは違い、解放的なラウンジも受付スタッフのいるフロントもない。代わりに部屋の写真がバーンと大きく掲示されている機械があった。

 男は蛍を連れてその前まで歩く。端っこのほうに一応フロントらしき窓口があった。が、薄汚れたカーテンがかかっていて奥にスタッフがいるのかいないのかわからない。

(仮にもホテルなんだから、無人ってことはないよね。声をあげたら誰か助けてくれるかな?)

「あっちに駐車場と繋がる裏口がある」
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