冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 翡蓉楼は都内の中華レストランのなかでも指折りの高級店だ。味も接客セービスも満点なうえに、プライバシーの保たれるゆったりとした完全個室が政治家や官僚から信頼され御用達となっていると聞く。

 蛍たちの部屋にも豪華な料理が次々と運ばれてくるが、正直、今はそれどころじゃなかった。

「どういうことなのか、説明をお願いします」

 にらみつけるような強い眼差しを、蛍は男と晋也に送った。

 晋也は仕立てのよいグレーのスーツに紺のネクタイ。細いシルバーフレームの眼鏡をかけている。ファッションもオールバックに撫でつけた髪も、三十六歳という彼の年齢から考えるとややおじさんっぽく思えるが、政治の世界ではそのほうがプラスになるのだろう。いつも冷静で穏やかな彼も今日は表情が硬い。

「今日蛍さんに来てもらったのは、彼を紹介するためだったんです」
「菅井左京、三十四歳。警察庁に勤めていて、階級は警視正だ」

 晋也の言葉を受けて、男――左京が自己紹介をした。そういえば京都では互いに名乗ることもしなかったのだ。

「警察……」
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