冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 ようやく状況は見えてきた気がする。ようするに治郎が赤霧会という暴力団に狙われていて危険な状況にあるということらしい。

 蛍は晋也に顔を向け、きっぱりと告げる。

「如月さんや海堂さんが大変な状況だというのは理解しました。同情しますし、心配もしています」

 もっとも蛍が心から心配しているのは晋也だけだ。左京が同席していなければ、治郎の秘書などやめて転職するよう頼んだかもしれない。

「ですが、私とはなんの関係もないことです。私は……海堂治郎の娘じゃありませんから」

 硬い表情で蛍はつぶやく。海堂治郎の子は息子がひとりだけ。世間ではそういうことになっているし、これまでも海堂家の一員としてみなされたことなど一度もなかった。

(こういう話を聞かされるのも初めてだわ。なぜ今回にかぎって?)

 政治家にトラブルはつきもの。似たような話は今までにもあっただろう。でも、蛍はよくも悪くもずっと蚊帳の外だったのだ。

「その……蛍さんのお気持ちもわかりますが、海堂先生はあなたのことをきちんと娘として大切に思って」

 歯切れの悪いフォローをする晋也を遮って、左京が蛍と目を合わせる。
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