冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 ぐるんと首を動かして晋也を問いつめる。彼は困ったように視線をそらし、後頭部をかいた。

「非常に申しあげづらいんですが……蛍さんには菅井さんと結婚してもらいたいんです」

 蛍の顔が凍りつく。その後の晋也の言葉は正直、よく聞き取れなかった。

 千代田区。霞が関からほど近い場所にあるラグジュアリーマンション。

 ここで左京はひとり暮らしをしているらしい。

 中華レストラ翡蓉庵での食事を終えたあと、左京に半ば強引に連れてこられたのだ。目的はおそらく……蛍の説得だ。彼は『ふたりでじっくり話したい』と言って晋也を帰してしまった。

 地下駐車場で車をおり、エレベーターに乗った。マンションというより高級ホテルのような造りだ。彼はカードキーをかざし、最上階のボタンを押した。

「セキュリティに関しては安心していい。同フロアの部屋はすべて菅井家で所有していて、今は俺しか住んでいないから不審者が紛れることもない」

 さらりとセレブな発言が飛び出たが、蛍には関係のないこと……と信じたい。

(身を守るためとはいえ結婚なんて……ありえないわ)
< 53 / 219 >

この作品をシェア

pagetop