冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
『左京さんのおじいさまは元警察庁長官。菅井家は警察官僚を代々輩出する名家です。裏社会の人間としてはもっとも怒らせたくない相手でしょう』

 その菅井一族である左京の妻という立場を得れば赤霧会も蛍に易々とは手が出せなくなる。晋也は結婚の理由をそう説明した。

 ようするに、海堂家は表立って蛍を守る気はないから、その代わりを左京が務めるという話のようだ。

『蛍さんさえ承諾してくだされば、海堂治郎の娘が菅井家に嫁入りするという情報をすぐに赤霧会の耳に入るよう流します』

 晋也の主張もわかるが、もちろん即座に首を縦に振ることなどできなかった。

 赤霧会に狙われていることも、よく知りもしない男と結婚しろと言われたことも悪夢としか思えない。早く覚めることを祈って、無駄にゴージャスなエレベーターのなかで蛍は自分の頬をムギュッとつまんだ。

 左京の部屋は信じられないほどの豪華さだったが、驚くほどに生活感がない。

 背の高い窓の向こうに広がる都心の景色、ダークブラウンを基調としたシックなインテリア、ピカピカのアイランドキッチン。まるで――。

「モデルルームみたい」

 思わずつぶやくと、彼はふっと笑った。
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