冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「散らかすほど家にいないからな」

 官僚は多忙だと聞く。彼もそうなのだろう。

「適当に座って」

 彼は蛍にソファに座るよう促した。自分は冷蔵庫を開けて、五百ミリリットルのペットボトルのお茶をふたつ持ってきてテーブルのうえに置く。

「悪いがこれでいいか? もらいものの茶葉がどこかにあると思うんだが、飲んだら腹を壊しそうだから」

 かなり雑な暮らしぶりのようだ。蛍は礼を言ってお茶を受け取る。

 蛍の隣、といってもひとりぶんほどの距離を開けた場所に左京も座った。

「警察庁にお勤めとおっしゃっていましたよね」

 彼の仕事に興味はないし世間話をする気分でもないが、沈黙も気づまりだ。彼もいきなり本題に入るのはどうかと思ったのだろう。世間話にのってきた。

「そう、最近警視庁から戻ってきてね。現場を離れることになったから、今後はこの家にも多少の生活感が出るかもな」

 キャリアである彼の所属は警察庁。キャリア組はそこから警視庁や地方県警に出向するという仕組みになっているそうだ。警察庁は全国の警察組織を管轄するのが仕事なので、いわゆる事件捜査などの現場に出ていくことはあまりない。
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